海外衛星受信におけるスクランブル解除と法的な線引き

ネットで調べた受信事情色々
05 /09 2009
(海外衛星受信ファンとして海外フォーラムを回ったり高機能チューナーを物色しているうちに色々と気になったので、既に得ている情報に加え新たにウェブ上で自分なりに調べた内容を追加しながらちびちびと書き溜めてみました。)


■スクランブル不正解除のマーケット

海外では衛星放送の有料パッケージが高い、サービス地域外ながら衛星のシグナル自体は届いているので何とかしてその放送を見たい、といったニーズから様々な海賊行為が広く行われています。

「有料放送ではないがスクランブルがかけられている放送を何とかして見たい」というマニア心から生じた個人的なスクランブル解除の作業だけに留まるならば問題はそう拡大しないのかもしれませんが、実際には有料放送を安く見たい・タダで見たいというニーズから有料サービスが展開しブラックマーケットとして拡大、放送業者を圧迫するという図式に発展してしまっているというのが実情のようです。


■スクランブル解除情報の解読とチューナーでの利用

よくあるのは、有料カードや専用視聴チューナー等のスクランブル解除情報をハッキング・解読し、英数字列の解除情報をそのまま掲示板に書き込みスクランブル解除機能を持つユーザーがその情報を元にデクリプトして視聴を行うという方法です。(→大物衛星ハッカー・タラノフスキー氏のインタビュー記事同氏のスマートカード解析工房ビデオ

この英数字列を入力できるシステムは「秘密機能」、「裏コマンド」として一部のチューナーに備えられていることが多く、同メニューで英数字を打ち込むことでスクランブルを解除する仕組みです。

Linux系チューナーに関してはスクランブル解除情報を一定の書式に従って記したファイルをインストールするだけではなく、インターネット接続を経由してリアルタイムにスクランブル解除情報を受け取るというシステムも利用されています。

【普通のチューナーに特殊機能を持つ機材を組み込むケース】

ブランクスマートカードといって中に記録の入っていないスマートカードや特殊CAMをパソコンに接続し、ハッキングで得られたスクランブル解除情報をプログラミング・入力後、チューナーのスロットに挿入して複数の有料チャンネルをタダ見するという方式もあります。

これをやるとLinuxチューナーでも裏コマンドを備えているのでも何でもない普通の有料放送スマートカード対応スロットを持ったチューナーでスクランブル解除できてしまうため、製品が広く流布しているヨーロッパ等において不正解除の規模を一層大きなものとしているらしいです。


■スクランブル情報を解読できていない有料放送の不正視聴

またカード・シェアという行為では、スクランブル情報を未だに解除できていない最新方式の放送に関して正規版スマートカードをインターネット接続でユーザー達が共有し、実質的にはダミーのスマートカードを各人が保有するという形が取られているようです。

Irdeto2でスクランブルがかけられた有料放送は大抵このカード・シェアが行われているそうで、スマートカード情報を流すサーバのIPアドレス等をチューナー内にインストールするファイルで設定できるLinux系モデルやカード・シェア対応CAMを挿入した通常チューナー等を保有しているユーザーらがLAN経由でアクセスを行う仕組みになっているとのこと。

機能的に優れたマニア向けブランクスマートカードの中にはIrdeto2のスクランブル解除を行えるものがあり、不正視聴を防ぎたいがゆえにIrdeto2という新しいスクランブル方式に変更したはずの放送業者も頭を抱えているようです。


■偽造スマートカード

また有料放送視聴に使うスマートカードを偽造するという手法もあるようです。これについてはAgila-2に有料パッケージを持つDREAM SATELLITE社の警告にも写真が載っていました。


■専用チューナーを複製したり無許可でケーブルテレビで流したり

専用チューナーを使うサービスに関しては確かクローンチューナーが出回ったケースもあったと思います。(日本でいうなら視聴契約が要らず、ずっとタダ見できる偽スカパーチューナーが出回るような話に相当。)

国によってはインターネット経由ではなく勝手に放送網のようなものを構築して再送信するグループもいるとか。通常有料放送として流している娯楽チャンネルのコンテンツをモグリのケーブルテレビ網で流して摘発された、といったニュースを時折英語サイトで見かけることがあります。


■スクランブル情報解除行為の見返りとして有料で提供されるサービス

上記の中でコンスタントに有料で提供されているサービスもあり、正規料金より安価なこと、複数衛星の有料放送をパッケージとしてまとめて提供しているケースもあることから人気を得ているとか。

スクランブル解除情報をLinux系チューナーに提供する形態については、正規の放送業者から認可されたケースもあるらしいのですがやはり非常に少ないようで、通常有料放送の本社や代理店ではない個人・グループからお金を出してスクランブル解除の技術・情報を得ることは非正規行為に相当するとのこと。

有料放送チャンネルは海賊行為を防止するためスクランブル解除に関係するECM(electronic countermeasure)という信号を送り正規契約を結ばないスマートカードを使用できなくするという方策を取っているそうですが、ハッカー達の中にはこのECM情報の送信を解析し、ECM送信のタイミングも把握。PCやインターネットを通じて情報を送信することで非正規スマートカードの使用停止を阻止するのだとか。

このECMによる利用停止を防ぐ目的で広く利用されているのがクローンチューナー(/pirated receiver;海賊版チューナー)や専用マニアグッズで、保有者は継続的に有料放送を見られるようにECM情報を流すサイトに月数千円といった利用料を払って登録する形になるとのこと。これはハッカーにとって大変儲かるビジネスらしく、とある英語サイトによるとスクリプトを作成して100万円相当近く稼ぐことも可能なのだとか。

例えばLinuxチューナーではCCcamといったサーバにリクエストを送るとスクランブル解除に必要なECM情報をその都度獲得。カード・シェアというシステムと合わさることで、スマートカードを持っていなくとも正規契約している時と変わらぬ状態で継続的に放送を見られる仕組みになっている模様。

要は、ハッカーにお金を出してスクランブル解除の手間を請け負ってもらうようなものなのかもしれません。お金を払っていても、放送業者には契約料としての収入は一切入らず、商業ベースでハッキングを行っている側に収益が行っているという訳で、サテライト・ハッカーには相当儲かる商売らしいです。


■スクランブル解除詐欺

ちなみにヨーロッパのフォーラムによると、「スクランブル解除ファイルを送信します」とLinux系チューナーを持つなどする個人からお金を集めておいて、しばらくしたらプロバイダのサーバを閉じて行方をくらます悪質な詐欺もあるとか。


■当局による摘発・逮捕

関連法律を整備している国ではこの手のサーバ、プロバイダを海賊行為と見なすなどし、実際に摘発・逮捕が行われています。ネットの情報によるとギリシアやキプロスもその一つで、カード・シェア、CCcamサーバの摘発や閉鎖が行われているとのこと。

国によって法律の有無や対応の厳しさの度合いは違うようで、相当厳しい国ではIPアドレスや顧客名簿をたどっての逮捕も辞さない程の態度で取り組んでいる場合もあるらしいので、現地での利用に際しては被害に遭わないよう各自予め情報を調べた上で判断するのが良いかもしれません。

また逆に関連法律が存在しない国や対策が特に進んでいない地域では罰則や摘発が無いということにもなるようで、商業ベースで運営しているスクランブル解除情報送信サーバによっては国内での規制が強まったのを見てそうした緩めな別の国に拠点を移すこともあるとの話です。


■数十億円、数百億円単位の損失と各国政府の対策

「研究目的で使用して下さい」という販売・利用の規模がマイナーどころか一大産業レベル並に大きくなってしまったり、モグリで放送を再送信したりする業者が市場を拡大するなどした結果、例えばカナダの場合2001年だけでSatellite Piracy(衛星放送関連の海賊行為)による損害見積もり額が10億ドル(ということは数百億円に相当?)にのぼったとか。これを受けてカナダでは摘発・逮捕に力を入れ、法律もかなり厳しいものに改正したのだそうです。

北米では特にDirecTV関連ハッキングが深刻で、カナダ・米国双方で一大ブラックマーケット網を構築したカナダ人Martin Mullenという大物が逮捕された事件では、2004年の時点で懲役7年が言い渡されています。(別の逮捕でFBIが不正解除行為を行った人物を逮捕した時の記事はこちら他。)

ヨーロッパ各国でも定期的に摘発活動が行われ、ハッカー、販売業者とのいたちごっこが続いているのだとか。

放送業者がスクランブル方式をアップグレードすればそれに対応したマニア製品が誕生する、という繰り返しで、海外衛星業界では放送業者が数年毎にスクランブル方式を変更しているのが普通である模様。

摘発に際しては「解除できると示唆した上で特殊機能を備えたチューナーを売っていた」という理由で逮捕されるらしく、基本的に現地の小売業者はスクランブル解除ができるチューナーやスマートカードについて「特殊機能については触れません。サポートしません。関知しません。」とユーザーからのサポート要請を受けない形を取っていると示すことで摘発されないよう注意しているようです。

またインターネット接続の普及で、法律が整備されておらず著作権や映像関連の権利侵害に関し規制が緩い国からスクランブル解除情報発信やコピー製品通販が相当規模で行われ、ヨーロッパや米国といった地域のユーザーに広まるという問題も生じている模様です。


■日本でのスクランブル解除について

有料衛星放送パッケージスクランブル解除情報のネット経由提供に関する法律が整備されていない国にあるカード・シェア等サーバの利用については欧米でも意見が分かれており、プロバイダ契約仲介を申し出るアジア地域出身者による「本国には規制する法律が無いので違法行為には当たらない。だから自分が仲介するカード・シェアサーバを気兼ねなく使ってくれて構わない。」といった書き込みが英語フォーラムでも見られます。

ただ最近アジアではCASBAA(アジアケーブル衛星放送協会)という組織が海賊行為対策を推進しているそうで、今後様々な国において働きかけを強めることがあるかもしれません。そういう意味では将来的に規制の枠が変わっていく可能性もあるということでしょうか。

日本は海外衛星大国の地域外にあるので海外衛星を非正規でスクランブル解除することに関する法律自体は無いかもしれませんが、国境を越えてハッカー業者にお金を出した時点で、現地において問題になっている不正解除と業界が負っている数億円~数百億円単位の巨額損失に関わることは確かだと思います。

海外衛星受信というホビーにおいてスクランブル放送受信を楽しむ場合は、上記の現状を踏まえた上で各自の判断が必要になりそうです。

虎太郎

デジタル機器の好きな元文系人間です。家のあれこれで機材のメンテナンス継続が難しくなり海外衛星受信やPC自作は引退。

最近はPCやタブレットを使ったインターネットTV、STBのリモート視聴機能、Slingboxによるライブストリーミング、Android TV Boxにて国内外の放送を楽しんでいます。

所有Slingbox;
PRO-HD、350、500、M2

所有PC;
Windows 10、Windows 7

所有タブレット;
iPad、Android、Windows 10

その他;
Apple TV、Android TV Box